生活支援型通所サービスとは?

 まず「生活支援型通所サービスとは?」の説明に入る前に、2015年の介護保険制度の改正により新たに設けられた「総合事業(正式名称は介護予防・日常生活支援総合事業)」の説明からさせていただきます。

 総合事業は、要支援者と要支援状態となるおそれのある高齢者を対象として、介護予防と日常生活への支援とを切れ目なく提供する仕組みとして創設されました。 総合事業には大きく分けて「介護予防・生活支援サービス事業」と「一般介護予防事業」があります。

 「介護予防・生活支援サービス事業」とは、要支援者の訪問介護と通所介護(デイサービス)と、新たに実施される介護予防や生活支援を必要とする高齢者のための訪問型と通所型のサービスです。
 一方、「一般介護予防事業」は、市区町村が住民の互助や民間サービスと連携し、高齢者の生活機能の改善や生きがい作りを重視した介護予防に役立つ事業のことです。

 総合事業の特徴として以下の二点があげられます。
 ❶要介護認定の申請を行わずとも介護予防サービスを利用できる
 ❷その活用については市町村の判断と裁量に任されている
 これは、益々進展する我が国の超高齢社会において、地域を基盤とした高齢者への自立支援に対するスピーディーな総合的取組が必要である、という観点からです。

 ここで、これまでの介護保険制度を利用者の立場に立って整理します。

 まず、家族が介護を必要としたら、地域包括支援センター(福岡市の場合は各区にある「いきいきセンター」)に相談に行き、相談窓口の案内に従いながら、「要介護認定」の申請を行なう必要がありました。
 要介護認定の申請を行うと一連の手続きを経て、一か月ほどで要支援1・2、要介護1~5の7段階に振り分けられました。
 このように自分の区分が認定されることによって初めて、その振り分けられた段階で示された支給額の中で、国が提供する訪問介護や訪問看護・通所デイケアなどの、「介護保険サービス」を受けることができました。
 今までは、国が提供するものなので、全国一律で一定の質が保たれた専門家によるサービスが受けられました。

 ここで新たに総合事業が創設されました。

 総合事業は要支援者と要支援状態となるおそれのある高齢者を対象としているので、要介護認定において「要支援1・2」の方と要介護認定で非該当(自立)となった方が対象となります。
 加えて、新たな取り決めで、「市町村が行うチェックリストで生活機能の低下がみられたが要介護認定を受けていない方」も総合事業の対象となりました。
 ※ このほか、65歳以上のすべての方を対象として介護予防に関する啓発等を行う「一般介護予防事業」があります。

○介護予防・日常生活支援総合事業によるサービスを受けられる方

 要支援の方も要介護の方と同様、これまでは国からのサービスを受けていたわけですが、総合事業の登場で今まで国が提供してきたサービス5つのうち、
①訪問看護 ②通所リハビリテーション ③福祉用具貸与の三項目は従来通り国が、
④訪問介護 ⑤通所介護の二項目を各自治体が「総合事業」として請け負うこととなりました。

 なお、総合事業では ➃訪問介護 ⑤通所介護が細分化されたうえで名称が変わり、
①訪問型サービス ②通所型サービス ③生活支援サービス ④一般介護予防事業
の四項目に分類されるようになりました。

 ここでようやく「 生活支援型通所サービスとは?」に触れます。

 生活支援型通所サービスは総合事業とともに始まった新しい形の介護サービスです。
 それは、新たな名称で言うところの ➁通所型サービス の一つに当たります。つまり「総合事業」内のサービスの一種となるわけです。

 さて、それでは、これまでの介護予防通所介護(デイサービス)と生活支援型通所サービスとはいったい何が違うのでしょうか。

 一番の違いはスタッフの資格の有無です。
 これまでの介護予防通所介護(デイサービス)では介護の専門職であるヘルパーや介護福祉士の存在が必要でした。入浴や食事の提供などのテクニカルなサービスを提供することができるようにです。
 一方、生活支援型通所サービスでは介護の専門職のスタッフが必須ではありません。そのため入浴や食事の提供などが無く、運動機能訓練やレクリエーション等が主なサービスとなります。
 しかし、その分施設の申請のハードルが低く、より多くの要支援者を支える場が増えることとなります。
 また、生活支援型通所サービスの方が介護予防通所介護(デイサービス)より利用料が安価となるため、これからの介護保険の支出の抑制を担う役割が期待されています。

 以上のように生活支援型通所サービスはまだまだ始まったばかりの介護サービスです。まだあまり知名度はありませんが、これからの団塊の世代の高齢化を考えると、市町村にとってはなくてはならない介護サービスとなることでしょう。